【法改正対応】古物商許可の要件と手続きの流れ

古物営業法及び同法施行規則が令和2年4月1日に改正され、古物商許可についていくつかの変更がなされました。

古物商許可申請も大幅に変更がなされましたので、改正点を踏まえながら、古物商許可の要件や手続きの流れについてくわしく見ていくことにしましょう。

改正古物営業法(令和2年4月1日施行)のポイント

主な改正点は次のとおりとなっています。

  1. 許可単位の見直し
    主たる営業所を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所を設ける場合には届出を行うことで営業が可能となりました。
  2. 事前届出の新設
    主たる営業所等の別、営業所等の名称、所在地の変更(新設、廃止、移動を含む。)等の変更については、変更の日の3日前までの届け出が必要になりました。
  3. 申請書等の簡素化
    正副2通での申請が必要となっていましたが、正本1通の申請でよいことになりました。
  4. 新許可証交付申請
    2以上の都道府県公安委員会から許可を受けていた場合は、主たる営業所所在地を管轄する警察署に、同許可証を返還し、新許可証の交付を受ける必要があります。
    申請期限は令和3年3月31日までとなっています。

改正前の古物商許可を受けていた方で、新許可証交付申請を行わないまま令和2年3月31日を経過している方は、現在お持ちの古物商許可が失効しています。

そのまま営業を行った場合は「無許可営業」となっていますので、ご注意ください。

また、営業を行うためには、新たに古物商許可許可申請が必要となります。

古物商許可を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

次の各要件について、詳しく解説していきますね。

また、申請の流れや注意点についても注目していきましょう。

古物商許可の欠格要件

古物商許可申請には、申請者が古物業法で定められた欠格事由に該当してしまうと許可が下りないという厳しい欠格要件があります。

次の欠格事由のいずれかに該当してしまうと許可を取得することができないので、申請前にかならずチェックが必要となります。

  • 成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
  • 禁錮以上の刑又は特定の犯罪(古物営業第31条に規定する罪)により罰金の刑に処せられ、五年を経過しないもの
  • 許可を受けないで古物営業を営んだ罪
  • 不正な手段により許可を受けた罪
  • 自己名義をもって他人にその古物営業を営ませた罪
  • 公安委員会の命令に違反した罪 刑法第247条(背任) 、第254条(遺失物等横領) 、第256条(盗品の運搬、保管、有償譲渡、有償の処分のあっせん)
  • 住居の定まらないもの
  • 古物営業の許可を取り消されてから五年を経過しないもの(法人の場合、その当時の役員も含みます。)
  • 営業に関して、成年者と同一の能力を有しない未成年者(ただし、未成年者であっても、婚姻している方や、古物商の相続人であって法定代理人が欠格事由に該当しない場合は申請できます。)欠格要件に該当する場合は、許可申請をおこなっても、必ず不許可となってしまいます。

ところで、欠格要件が適用される申請者の範囲とはどこまででしょうか?

以下にまとめておきますね。

欠格要件の適用される範囲

個人の申請の場合
  • 申請者本人
  • 申請者以外が管理者になる場合はその方も該当します。
法人の申請の場合
  • 登記簿上の役員
  • 登記簿上の役員以外が管理者になる場合はその方も該当します。

個人での申請を考えている場合は、申請者本人となりますが、管理者を別の方で考えている場合は、その方も適用されることとなります。

また、法人で申請を考えている場合は、登記簿上の全役員(取締役や監査役など)と管理者となる方が適用されることとなります。

法人の場合は、登記簿に記載のある役員であれば、非常勤の役員や外部役員であっても適用されることになってしまうので、注意が必要です。

古物商許可の営業所要件

古物商を営業する際には、営業所を設置する必要があります。

また、その営業所を使用する権限が、申請者にあるのかどうかも証明する必要があります。

たとえ、インターネットのオークションなどでの営業だけを行う場合も、業務をおこなうための営業所はかならず必要となります。

営業所要件をクリアするためには?

実際に営業所を準備するためには、ご自宅を使用する場合や賃貸物件を使用する場合などで証明に必要な資料が異なります。

以下に例示していくことにしましょう。

自己所有物件の場合

基本的に自分の意思で営業所として使用可能なはずですので問題ありません。

法人での古物商許可取得をお考えで、営業所が代表者の所有物件であるような場合は、代表者から法人への賃貸借契約書や使用承諾書などを準備する必要はあります。

自宅兼営業所として使用する場合は、居住スペースと事業用スペースの区分が必要となる場合もありますので、その場合は平面図や写真などで証明することになります。

賃貸物件の使用目的が居住用の場合

マンションなどで賃貸契約書の中に「居住用」と記載がある場合は、古物商の営業所として認められないこととなっています。

そのような場合は、物件の大家さんに「使用承諾書」という書類をもらう必要があります。

使用承諾書には、「△△マンション○○号室を古物商の営業所として使用することを承諾する。」旨の文言を 記載し、大家さんの同意(署名押印)をもらうことになります。

 賃貸物件の使用目的が事業用の場合

賃貸物件の中に「事業用」や「事務所」の記載がある場合、原則として古物商の営業所として使用することが可能です。

ただし、申請先となる警察署の多くでは、賃貸契約書の添付にあわせて、別途「使用承諾書」の提出も求めるところも多くあります。

事前に管轄の警察署に使用承諾書の提出が必要かどうかや物件の大家さんに承諾を得ておいたほうがよいでしょう。

物件が公営住宅の場合

ほとんどの公営住宅では事業などの営業を行うことは禁止されています。

公営住宅には管理組合などがあると思いますので、念のため規約など確認してもよいと思いますが、残念ながら承諾は得られることは少ないと思われます。

バーチャルオフィスやレンタルオフィスを営業所とする場合

管轄の警察署によって対応は異なりますが、原則として認められないことが多いでしょう。

警察の見解としては、古物の在庫管理などが必要ない販売形態であったとしても、取引伝票や古物台帳などの重要な書類の保管場所が必要であり、バーチャルオフィスなどは適正な保管場所とはいえないと考えているようです。

ですが、バーチャルオフィスにも様々な形態があると思われますので、事前に警察に確認したほうがよいでしょう。

古物商許可の管理者

管理者の設置

古物商を営む営業所には、営業所ごとに1名の管理者を設置する必要があります。

管理者の責務は、古物商に係る業務を適正に管理することとされています。

管理者の要件

役職や実務経験などが問われるわけではありませんので、法人の役員や代表者以外の方が就任することも可能です。

ただし、古物の取引に関して、管理監督できる方を選任する必要があります。

また、次に該当する方は管理者に選任することができないこととなっています。

  1. 未成年
  2. 住所の定まらない方
    営業所とあまりにも遠方の住所地で常勤が確認できない方もあてはまります。
  3. 他の営業所の管理者となっている方(兼任不可)
  4. 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権の得ないもの
  5. 過去5年以内に禁固以上の刑に処せられ、又は財産犯を犯して罰金刑に書せられたことのある者
  6. 過去5年以内に古物営業の許可を取り消された者など

特に 3の他の営業所で管理者となっている場合は、兼任することができないので注意が必要です。

管理者の変更

管理者が退職するなどした場合は、新しい管理者を選任する必要があります。

また、管理者を変更した場合は、14日以内に変更届を提出する必要があります。

古物商許可申請の流れ

古物商許可申請を行う場合、無事許可を取得するまでに、おおよそ40日程度の期間が必要となると思います。

おおよその流れは次のとおりとなります。

申請の流れ

要件チェック

古物商許可申請が可能であるかどうかについて、欠格要件や営業所の要件などを事前にチェックする必要があります。

必要書類の収集

申請の各種要件を証明するため、官公庁から証明書を取得したり、会社内部の資料から必要なものを選別するなどを行います。

申請書類の作成

申請書類に関しては、統一の様式のほか、管轄警察署によっては独自の様式を準備しているばあいもあります。

また、申請書類の部数も何部必要となるかも管轄警察署によっても異なりますので、注意が必要です。

審査

窓口での審査で問題がなければ、申請手数料を納付して受付となります。
審査は、受付後おおよそ40日程度が必要で、審査期間中に警察官による営業所の実地調査が行われます。

古物許可証の受け取り

古物許可証の受け取りに関しては、申請者本人と限定している警察署もあります。

古物許可証を受け取った後、標識を事業所内に掲示して営業を行います。

申請に必要な書類

申請書類と添付書類は次のとおりとなっています。

個人の場合 法人の場合
申請書(正副二通)
  1. 許可申請書その1(ア)
    申請者の氏名や住所、法人の場合には代表者について記載します。
  2. 許可申請書その1(イ)
    法人の場合は役員について記載します。書ききれない場合には、複数枚を作成し、提出します。
  3. 許可申請書その2
    主たる営業所の名称や所在地、管理者について記載します。
  4. 許可申請書その3
    その他の営業所がある場合、名称や所在地、管理者について記載します。
  5. 許可申請書その4
    ホームページを利用して古物の営業を行う場合、URLを記載します。
添付書類(各一通)
  1. 略歴書
  2. 住民票の写し
  3. 個人用の誓約書
  4. 身分証明書(市町村が発行する行政証明)
  1. 代表者・役員の略歴書
  2. 代表者・役員の住民票の写し
  3. 代表者・役員の身分証明書(市町村が発行する行政証明)
  4. 代表者・役員の誓約書
  5. 定款
  6. 履歴事項全部証明書
  1. 管理者の略歴書
  2. 管理者の住民票の写し
  3. 管理者の身分証明書(市町村が発行する行政証明)
  4. 管理者の誓約書
  5. ホームページを利用して古物の取引きをする場合は、送信元識別符号(URL)を使用する権限のあることを疎明する資料
  6. 賃貸契約書
  7. 使用承諾書

略歴書

略歴書については、氏名・住所・生年月日の他、賞罰の有無、最近5年間の略歴を記載する必要があります。

管轄の警察署によっては、顔写真の添付が必要な場合もありますので、事前に確認するほうがよいでしょう。

誓約書

古物営業法第4条(許可の基準)で許可を受けることができない者、第13条(管理者)の第2項では、管理者になることができない者についての欠格事由が規定されています。

誓約書は、これらの規定内容に該当しないことを誓約する書面となります。

身分証明書

従前の例によることとされる準禁治産者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しないことを証明するもので、本籍地の市町村が発行する行政証明書となります。

定款

定款はコピーしたものに毎ページごとに代表社印を割印し、末尾に「  年  月  日 以上、原本に相違ありません。会社名 代表取締役氏名」を記載し、代表社印を押印する必要があります。

送信元識別符号(URL)を使用する権限のあることを疎明する資料

次のような書類をいいます。

  1. プロバイダ等から交付されたURLの割り当てを受けた通知書等のコピー
  2. 通知書を紛失等している場合は、再発行を受けるか、インターネットで「ドメイン検索」、「WHOIS検索」を実施し、検索結果の画面をプリントアウトしたもの(検索結果が、申請者の名前、法人名、所在地等と一致することが確認できる内容のものが必要です。)
  3. URLの登録者が家族などで申請者と異なる場合は、登録者からの使用承諾書を添付

ホームページ(URL)の届出

単発でオークションサイトに出品する場合や入札をする場合には必要ありませんが、自社のホームページを開設して古物を取り扱う場合やネットオークションにショップを開設する場合には、URLを届け出る必要となります。

URLの届出は、ホームページ開設から2週間以内にすればよいことになっています。

新規で古物商許可申請を行う際には、申請中に開設準備をして、許可取得後に直ちにホームページを開設する必要がありますが、単に「ホームページを開設する予定」である場合は、新規の許可申請時にはURLの届出をしないで、許可取得後にホームページを開設した後、あらためてURLの届出を提出する必要があります。

また、URLの届出に別途手数料は発生しません。

複数の都道府県に営業所がある場合

営業所とは?

古物商許可の「営業所」とは、実際に古物を取り扱うかどうかを基準で判断することになります。

例えば、登記簿上の本店では古物を取り扱っていないが、別に店舗がありそちらでは古物を取り扱っているような場合は、本店では古物商許可の取得は必要ありませんが、店舗での取得が必要となります。

また、令和2年4月1日の法改正前は、複数の都道府県で古物商を営業したい場合は、都道府県ごとに古物商許可申請が必要でした。

ですが、法改正が行われた現在は、主たる営業所の所在する都道府県への申請のみで許可を取得すればよいということになっています。

主たる営業所以外の営業所については、届出を行えば足りることとなっています。

古物許可証・許可番号

以前は古物商許可を取得した都道府県ごとに古物商許可証がありましたが、法改正後の現在は、一事業者につきひとつの古物商許可証となっています。

ですので、古物商許可番号についても一つに集約されています。

営業所の管理者

管理者は各営業所ごとに選任する必要があります。

他の営業所との兼務は認められていないため、営業所ごとに1名の管理者が必要となります。

古物商許可についてのお問合わせ

ひかり行政書士法人では、古物商許可についてのご相談や古物商許可申請サポートのお申込みについて、お電話・メールでのお問合わせを承っております。

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その他の許認可申請について

その他の許認可申請についてお調べの方は、ひかり行政書士法人の総合サイト「許認可.net」もぜひご覧ください。

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